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スウェーデン滞在記(15)

3月29日
 スウェーデン滞在、とうとう最後の日です。この日は、嬉しい大発見があり楽しく滞在を終えることができました・・・その大発見とは?

2010_3_29 さて、よく考えたら、せっかくのストックホルム滞在なのに、ほとんど街を見ていないことに気づきました。スウェーデン作曲家が、どんな気持ちで作曲したのか、音楽作品を理解するのに街の風景を見ることも大切だったはずなのに、なんとも情けない話です。というわけで、単細胞の私は、てっとりばやく(?)、旧市街・ガムラスタン を見ることに。
 朝早く、地下鉄でガムラスタンに到着。とりあえず、ふらふらと一周りしてみました。中世の面影を残しているということですので、単純に考えれば、名前が残っているスウェーデン作曲家たち、ルーマン以降の人々は、だいたい見たはずの景色なはずです。勝手に一人で即席タイムスリップをした気分で散策。この辺りは、こんな細い道が沢山あります。(玄関のワンちゃんに注目!)とはいえ、15分程度の散歩でスウェーデンの街の雰囲気を体感したつもりになるのは、おこがましいにもほどがあるというもの。スウェーデン音楽の理解の為にも、観光はスウェーデンでしかできない重要な作業だったはずが、うまくスケジュールを組めずに大反省です。次回は、もう少し、スウェーデンの空気を感じられるようにしたいと思います。

 街中に出て、スウェーデンの本屋さんのチェーン店 Akademiebokhandeln で、だいたい目星をつけてあった、瑞伊辞書と瑞瑞辞書を購入。スウェーデン語の辞書は、英語や仏語のように、選択肢が沢山ないのが悩みの種です。せっかく購入した多くの音楽書。いくつかの辞書を読み比べて、少しでもスウェーデン文の内容の真意に近づければ、と思います。既に購入してあった楽譜と、分厚い辞書や音楽書を、郵便局で日本の自宅に郵送。

 とりあえず、ここまで午前中にやり、午後は国立音楽図書館の最後の訪問へ。今回は、ステーンハンマルの声楽曲の自筆譜の閲覧をお願いしてありました。前回の閲覧が、想像以上に面白く、いただいた所蔵リストから、再度、メールで閲覧希望を出しておきました。この日に見せていただいたのは;
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船は行く Det far ett skepp
娘は年老いた母に言った Dotter sade till sin gamla moder
スヴェーリエ (「ひとつの民族」より)Ett folk "Sverige"
幸福の国への旅 Lycklandsresan
ランプのアラジン王子 Prins Aladin af Lampan
薔薇に Till en ros
さすらい人 Vandraren
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出版された楽譜を持参して行かなかったのが残念でしたが、自分がピアノパートを演奏したことがある作品をピックアップしてリクエストしました。
 自分が演奏した時の記憶をたどり、出版譜と違いそうな箇所をメモしていきました。シンプルな伴奏形から効果的な音配置に変わっていく様が分り、興味深い作業です。初稿から書き変えられた箇所は、むしろ、作曲者ステーンハンマルにとって、「そうでないといけなかった」箇所、とも言えるかもしれません。

 スウェーデンの第二国歌と言われる「スヴェーリエ」の合唱譜。こちらは清書された決定稿のようでした。たいへん緻密に書かれた楽譜は、作曲者の性格も窺えますが・・・実は、大発見はその次にあったのです!

 スヴェーリエの楽譜を裏返すと、ペンの走り書きのような楽譜が。「何かしら?」と見てみると、なんと!ピアノ協奏曲第2番の冒頭の草稿でした。一気に書いた気配で、その横に、大きな字で「Ja! (英語のYes)」と書かれています。何か、閃いたのでしょうか?その内容は、この作品が生まれる元・核ともなる可能性があるようにも見えるもの。自筆譜はコピーも禁止されていますし、悩んだ挙げ句、持っていたルーズリーフに、自分で五線を書いて写譜することにしました。
 こちらの内容・・・本当に私にとっては宝のような内容でしたが、それについては、また、改めて詳しく書かせていただこうと思います。

 次回、図書館を訪れる時は五線紙を持って行けばよい、ということがよく分りました。

 ところで、この日の国立音楽図書館での出来事です。ステーンハンマルの自筆譜の資料をカウンターで受け取って、ふと隣を見ると・・・なんと!2日前にコンサート会場で紹介された音楽学者のエヴァ・オーシュトレム先生がいらっしゃる!二人で顔を見合わせて、びっくり。エヴァ先生は、前日のハンスさん宅でもお知り合い、ということで話題になった方です。
 エヴァ先生は、現在、「スウェーデン歌曲の父」と言われているリンドブラード Lindblad の伝記を書かれているとのこと。この日も、リンドブラードの楽譜を借りにいらしていたのでした。
 エヴァ先生は、ご自身の学生たちも、なかなか自分の国であるスウェーデンの音楽に興味を持ってくれないのに、私がその分野に興味を持ったことをたいへん嬉しい、と言って下さいました。前日に、私がピアノ練習の為にハンスさん宅に行ったことを知っているエヴァ先生。「ピアノの練習場所に苦労するのは良く分るので、次回来る時は、私も力になれると思うから連絡して下さい。」と、たいへんご親切なお言葉も頂戴しました。今回は、あまりゆっくりお話しできる機会がなく、残念でしたが、いつか、エヴァ先生とも、ゆっくりお話しさせていただける機会があれば、と思います。

 さて、図書館を出る前に・・・カウンター前に並べてある本や楽譜が気になり「これ、ひょっとして購入できるのですか?」と尋ねると、どうやら古い蔵書を処分する為に一冊数百円で売っていることが分りました。実は、奥にもそのような楽譜の山があることも教えていただき、閉館間際で大慌て。ペッテション=ベリエルなどの歌曲の楽譜と、ベールヴァルド Berwald の伝記、1954年出版のMusikliv i Sverige(スウェーデンの音楽ライフ)という本を手に入れることができました。

 こうして2週間ほどにわたるスウェーデン滞在を終えました。暖かい人間関係のお陰で、思いがけず、本当に多くの貴重な体験をさせていただくことができ、色々な意味で、スウェーデンの魅力を新たに感じる旅となりました。
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 通年のコンサートシリーズの開催をお休みさせていただいている当会ですが、無理ない形での活動を模索しております。今回の主宰者のスウェーデン滞在でできた貴重な人との繋がりも大切に、現在、来年の活動計画も考えているところです。決定次第、またご報告させていただきますので、今後とも、応援よろしくお願い申し上げます!

スウェーデン滞在記(14)

3月28日
 さて、スウェーデン滞在も残り2日。この日は、午前中、ペッテション=ベリエル協会の例会で知り合った、ハンスさん、イェッテさん御夫妻のお宅でピアノを練習させていただきました。今回、スウェーデン滞在直後に当会のサロンコンサートが控えていましたが、ヨーテボリからストックホルムに戻ってから、一度もピアノを触っていない状況。ハンスさん御夫妻のご好意には、感謝しています。(欧州では、日本のように時間借りできるピアノ付スタジオ、というのは、めったにありません。)ハンスさんは、文化省関係でお仕事されていますが、バイオリンも趣味で演奏されています。また、ペッテション=ベリエル協会だけでなく、シェーグレン協会や、スウェーデン作曲家の楽譜出版をしている音楽芸術協会 Musikaliska Konstföreningen でも活動をされているそうです。お宅には、ベヒシュタインのグランドピアノがあり、ホームコンサートもされるとか。
 待ち合わせ場所に迎えに来て下さったイェッテ夫人、「昨日、エヴァに会ったんですってね?」と。前日夕方、携帯に待ち合わせ確認の電話を私がした時、音楽学者エヴァ・オーシュトレムさん宅に遊びにいらしていたそうです。(エヴァさんは、私が前日、たまたまコンサート会場で出会った方です。)世の中、狭いものです・・・というより、音楽が人を結びつけてくれているのでしょう。

2010_3_28 ハンスさんのお宅は、ヴァイキングの遺跡が目の前にある、というストックホルムの少し北にあります。(ヴァイキングが活躍していた頃は、海は今よりもう少し陸側まで来ていたそうです)イェッテさんお手製のひまわりの種入りのパン(写真)と、ご自分たちで摘んだブルーベリーのジャムで朝ご飯をいただきながら、色々と音楽談義。スウェーデンの音楽を演奏するにあたり、楽譜をどう解釈したら良いか(どこまで作曲家の意志が反映されているかという問題)に悩む、というお話をすると、ひょっとして、こちらの本が役に立つかも、と音楽芸術協会の150年誌を下さいました。(今、少しずつ読んでいますが、なかなかおもしろいので、いずれ、少し内容をご紹介できれば、と思います。)また、何か質問があったら、と、ステーンハンマルの楽譜を校定した方の連絡先まで教えて下さいました。ハンスさんは、お話ししているだけでも、本当に音楽がお好きなのが伝わって来る方で、次回は、是非、ハンスさんのヴァイオリンも聴かせていただければ、と思います。
 「スウェーデン音楽には、スウェーデン語の響きが深く関係していると思う」という話を私がすると、デンマーク出身のイェッテさんはたいへん面白がって下さり、デンマーク語とスウェーデン語の響きの違いを実演(?)して下さいました。確かに、デンマーク語は、スウェーデン語より固く、力強い感じ。ドイツ語に近い雰囲気でしょうか?スウェーデン作曲家もデンマーク語に歌をつけていたりするのですが、字面はスウェーデン語とたいへん近く音の違いはピンと来ないのですが、実際の会話での音を聞かせていただき、初めてその違いが実感できました。
   
 久しぶりに思いっきりピアノを練習させていただき、リフレッシュした気分で午後はストックホルム市内へ。この日は、当会のサロンコンサート出演経験のあるオスカル・エクベリ Oskar Ekberg さんがピアノを担当される歌曲のコンサートに行って来ました。会場は、Nybrokajen11 のオスカル2世ホール Lokal Oscar II。(ピアニストとの名前の一致は偶然ですね・・・)
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Solveig Faringer (soprano)
Oskar Ekberg(piano)

"フランス人の愛 Franska förälskelser"

Bergerettes: Mes moutons je mène
Que ne suis-je la fougère
Maman, dites-moi
Chanson de Marie Antoinette
Jeunes fillettes
Fauré: Le plus doux Chemin
Chanson d'amour
Debussy: Romance
Mandoline

from Edith Piaf's repertoire
La vie en rose
Hymne de l'amour
Mon manège à moi
Mon Dieu
Fais-moi valser
Non je ne regrette rien
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 会場は、80人ほどのサロン風のスペース。ソプラノのファリンゲル Faringer さんは、スウェーデン語で歌詞の内容を感情たっぷりに朗読してから歌い始めます。オスカルの演奏を聴くのは5年ぶりでしたが、サングレースで聴かせていただいた、クリアな音色は健在で、フランス音楽にぴったり。情感たっぷりに歌うファリンゲルさんに合わせつつ、知的なセンスの光る演奏で、会場を盛り上げました。
2010_3_28a 終演後、改めてオスカルにご挨拶に。久しぶりの再会をとても喜んで下さり、私もたいへん嬉しかったです。彼は、メシアンを得意とされているピアニスト。音色も演奏スタイルも、たいへん合っていると思いますし、是非、いつかメシアンの演奏も聴かせていただきたいと願っています。現在、ルーマン J.H. Roman の12の組曲を全曲、録音中で、近々リリースされるとのこと。ルーマンといえば、3月に当会のサロンコンサートで北田法子さんが取り上げ、好評だった作品です。バッハとほぼ同年代のスウェーデンの作曲家ですが、バッハではありえないような転調やリズムの変化など、ユニークな音楽です。オスカルの録音を聴かせていただけるのが待ち遠しいです。
 日本にも、たいへん良い印象を持っている、というオスカル。また、当会の日本のコンサートでも、再び演奏を聴かせていただける機会があれば、たいへん嬉しいです。なにか、当会メンバーとの交流が活動ができないか、というお話も少しだけさせていただきました。少しずつでも、末永く続く活動をお互い、考えていければ、と思います。
 
 さて、この日はその後、もう一つ、イマヌエル教会 Immanuelskykanでの合唱のコンサートに行って来ました。今回の合唱団は、イマヌエル教会が作っている合唱団 Immanuelskyrkans Vokalensemble。(スウェーデンでは、各教会でも、合唱団を組織していることろが多いそうです。)王立管弦楽団のメンバーを中心とした室内オーケストラも加わる演奏会で、2日前にご一緒したヴィオラのペーテル・エリクソンさん、チェロのクラース・ガッゲさんも演奏される、ということでご招待していただきました。
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『フランスの合唱音楽 Fransk körmusik 』
指揮:Mats Nilsson

F. Poulenc: Quatre motets pour un temps de pénitence
O. Messiaen: O sacrum convivium
M. Duruflé: Requiem Op. 9
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 図らずも、この日は私にとってフランス音楽特集になりました。
 前半がア・カペラ。デュルフレで、オルガンと室内オーケストラが入りました。合唱団はアマチュアですが、この曲目をこなせるレヴェルといえば、だいたい皆様、様子が想像がつかれるかと思います。プログラムも良く、たいへん興味深いコンサートとなりました。ヨーテボリのヴァーサ教会ほど大きな教会ではありませんでしたが、高い天井の教会独特の響きの中で、スウェーデンの合唱の音を帰国前にもう一度楽しむことができ、幸せでした。

 終演後、ヴィオラのペーテルさんは、ヴァイオリンでオーケストラに参加されていた息子さんも紹介して下さいました。「スウェーデンの音楽、好きですか?」と尋ねると、「はい!」とのこと。「じゃあ、2つのセンチメンタルロマンスとか弾きます?」と聞くと「?」。お父様、慌てて「ステーンハンマルの、すっっっごく綺麗な曲なの!」気を取り直し(?)今度は「じゃぁ、ステーンハンマルのヴァイオリン・ソナタは?」息子さん「えっとぉ・・・(汗)」pout(<私)これがスウェーデンでの普通の場面なのだと思います。
 欧州留学中、フランスでスウェーデンのソプラノ歌手に会った際、ステーンハンマルはほとんど歌ったことがないと聞き、がっかりしたことがあります。ところが、彼女からしばらくして、「ステーンハンマルの歌曲を勉強してみたら、もの凄く勉強になった。良い機会をくれてありがとう。」とメールが来たことがありました。私たちも、海外の方から指摘されて初めて日本文化の良さに気づく、ということもよくあります。外から見たからこそ分る、スウェーデン音楽の良さを私たちが発見し、そして、内から見たからこそ分るスウェーデン音楽の良さをスウェーデンの方たちに教えていただき・・・そうした交流が生まれることが、現在、演奏機会がまだ多くないスウェーデン作曲家の作品を「成長」させていくことに繋がるのではないかと思います。
 ところで、帰国後、ペーテルさんからメールがあり、息子さんには良い曲を勉強するように言う、と約束して下さいました・・・というわけで、いつか、ペーテルさんのヴィオラとともに、息子さんのステーンハンマル:2つのセンチメンタルロマンス を日本で聴ける日が来るかもしれません!

スウェーデン滞在記(13)-3

3月27日(その3)
 ランチが終わり、元国立音楽図書館員のビルさんと一緒に、コンサートハウスの弦楽四重奏の演奏会へ。コンサートハウス Konserthuset には、前日に行ったオーケストラの為の大ホールの他に、室内楽の演奏会用の中ホールグリューネヴァルド・ホールGrünewaldsalen、そして小ホール アウリン・ホール Aulinsalen があります。今回は、中ホール グリューネヴァルド・ホールでのコンサート。2階席もあり、460人入るホールです。Isaac Grünewaldによる絵が壁や天井に描かれている暖かい雰囲気のホール。
 この日のコンサートは、その名も「ステーンハンマル弦楽四重奏団 Stenhammar Quartet」によるもので、曲目は;
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E. アンドレー:弦楽四重奏曲 ニ短調
Elfrida Andrée: Stråkkvartett d-moll
D. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第9番
D. Sjostakovitj: Stråkkvartett nr 9

L. v. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 作品127
L. V. Beethoven: Stråkkvartett Ess-dur op.127
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今回は、カルテットの名前になっている方(=ステーンハンマル)の作品が入っていないのは残念でしたが、スウェーデンの女流作曲家 アンドレーの作品が演奏されました。この弦楽四重奏団は、1995年に結成され、スウェーデン作曲家の作品をレパートリーの中心にしているそうですので、是非、ステーンハンマル始め、様々なスウェーデン作曲家の弦楽四重奏曲の演奏を他にも聴かせていただける機会があれば、と思います。ビルさんによると、スウェーデンには、以前には常設の弦楽四重奏団が沢山あったのに、今は減って来てしまっているそうです。とても残念なことなので、このステーンハンマル四重奏団には、是非、末永く活動して欲しい、とおっしゃっていました。

 休憩時間、たまたま出会った音楽学専門のエヴァ・オーシュトレムEva Öhrströmさんを、ビルさんが紹介して下さいました。彼女は、ストックホルム王立音楽院でも教えていらっしゃり、今回、演奏会で演奏された E. アンドレーの伝記も書かれています。私はスウェーデン音楽を日本で紹介する活動をしていて、スウェーデン音楽について調べている、という話ををしました。すると、エヴァ先生は、スウェーデン音楽に関する書籍は、多くがスウェーデン語で書かれていて、英語訳されているものは殆どない現状だけれど、国外にこのジャンルの音楽を知ってもらう為には、良いことではない、というお話をされていました。
 私の場合、英語も苦手なので、問題はもっと深刻です。欧米語なら、伊語が一番得意なのですが、伊語の北欧音楽の本となると、皆無に近いです。いずれにしても、もしも、スウェーデン語を母国語としている人が書いた本を読むのであれば、翻訳本でなく、スウェーデン語で読めるのが一番。翻訳されたもの、というのは、翻訳の時点で、翻訳者の“解釈”が介入することになります。(普段の会話の中でも「また聞き」というのは少しずつ現実との乖離が生まれるというのは常です。)できるだけ真実に近づく為には、介在するものを極力取り払いたい、という気持ちになるわけなのですが・・・やはり、スウェーデンの音楽を理解するには、スウェーデンの方々がしゃべっている言葉のニュアンスを少しでも沢山感じ取れるように努力することも大切だと、今回の滞在で、また強く思いました。

(話はそれますが、語弊があるといけないので付け加えます。私も翻訳本を全面否定するつもりはありません。例えば、ある物語を誰かが演出して劇にしたり、オペラにしたり、そういった「解釈」が重なることで、物語の本質の理解が更に深まること、というのも、もちろんありえます。ですので、優れた解釈表現=翻訳ももちろん存在するわけです。そういった「解釈表現」のひとつに、音楽もあるわけで・・話がそれ過ぎましたので、とりあえずこの辺りで。)

 さて、マチネのコンサートが終わり、夕方には、王立オペラ劇場で、「フィガロの結婚」を鑑賞。12年前、11年前に来た時には、古典的な演出のオペラばかりだった記憶がありますが、今年がプレミエの新演出の「フィガロの結婚」は、現代のホテルが舞台。久々の北欧歌手中心のアンサンプル感あるオペラを楽しみました。
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「フィガロの結婚 Figaros bröllop」
音楽:W.A. Mozart
指揮:Stefan Klingele
演出:Oke Anders Tandberg

Greve Almaviva: Ola Eliasson
Grevinnan Almaviva: Maria Fontosh
Susanna: Elin Rombo
Figaro: Johan Edholm
Cherbino: Katija Dragojevic
Marcellina: Marianne Eklöf
Doktor Bartolo: Lennart Forsén
Basilio/Don Cruzio: Ulrik Qvale
Barbarina: Vivianne Holmberg
Antonio: Anton Ljungqvist

スウェーデン滞在記・番外編

 前回の記事で、Kammarmusikens vänner i Allhegonakyrkanという演奏会企画団体のお話をしました。スウェーデンには、コンサートホールは、大きな街にも数カ所しかありませんが(これは、欧州のどの国でも言えることで、日本ほど施設の整った演奏会専門会場が沢山ある国を、私はまだ見たことがありません。)、教会などを会場とした小さなコンサートシリーズが沢山あります。
 スウェーデンは、イースターやクリスマスなどが国の祝祭日となる、キリスト教の国ですから、教会が沢山あり、教会自体が定期的にコンサートを開催しているところも多いです。(私がヨーテボリで演奏させていただいたコンサートは、このタイプのコンサートです。)他にも、音楽愛好家たちが企画した小さなコンサートシリーズ、夏の音楽祭なども沢山あり、教会、昔の邸宅(お城?)など、様々な場所が演奏会会場として使われているようです。
 例えば、インターネットのサイトで見つけて、私が個人的にたいへん興味を持っているのは、Jernboåsens kammarmusikförening(イェーンボーセン室内楽協会)という組織です。鉄道も通っていない本当に小さな村で、教会や学校、30人ほどの小さなサロンなどを会場に演奏会を行なっているようです。内容は、驚く程充実しています。実は今回、スウェーデンに行く前にこちらの主宰者ともメールでやりとりをさせていただき、できたらお話を伺いに行きたかったのですが、実現できず、残念でした。経済的理由で、一時、演奏会企画が滞っていると聞いていましたが、ウェブサイトを見たところ、また再開しているようなので、次回は、こういった小さな町のコンサートも視察に行くことができれば、と思っております。

スウェーデン滞在記(13)-2

3月27日(その2)
 さて、ヴィルヘルム様のストークはひとまず終了。前日に教えてもらった、楽譜屋さんへ。ストックホルムにただ一つの楽譜屋さん、と言われるアウロスAulos は、セーデルマルム島にあります。ヨーテボリのProcuraと同じく、やはり、作曲家の名前のアルファベット順に整理してあるものの、楽譜は横積み。しかも、こちらの楽譜屋さんは、ちょうど見やすい位置にはポピュラー系、ジャズ系の楽譜を並べてあり、クラシック系のほとんどは、足下と、脚立を使わなくては手が届かない高い位置に置いてあります。その上、本棚が壊れそうで(手作りらしく、棚のサイズが微妙に合っていない)、見にくい+楽譜を壊しそう(?)でまるで宝探しの気分。楽譜をかかえてレジに向かうと、店員さんに「Did you enjoy?」と言われました・・・(いや、エンジョイというか、苦労しました。)スウェーデンの首都にただ一つの楽譜屋さんと言っても、はっきり言って、お目当ての楽譜を定めてお店に行くと、おそらくがっかりすると思いますが、目的を決めずに物色するのであれば、日本ではまとめて手に入れることは難しいと思われるスウェーデン作曲家の楽譜を見つけることができます。今回は、弦楽器作品を中心に、ペッテション=ベリエルのバイオリンソナタや、ステーンハンマルの弦楽四重奏曲第2番、第3番などを購入することができました。
 
 この日は、12年前、初めてストックホルムにスウェーデン音楽の楽譜探しに訪れた際、国立音楽図書館で知り合ったビルさんとランチのお約束がありました。ビルさんは、現在は既に定年退職をされていますが、これまでも、当会のコンサートの為の楽譜を送って下さったり、いろいろお世話になっている方です。約束の場所へ行くと、ビルさんは、スウェーデンの音楽事情の話を聞けるのでは、とご友人の音楽評論家 ビルギッタ・フルトさんも誘って来て下さっていました。フルトさんは、音楽評論をお書きになる他、コンサートの前にプログラム解説トークをされたり、KVAH - Kammarmusikens vänner i Allhegonakyrkan (室内楽友の会・・という感じでしょうか)というコンサート企画の委員もされています。
 実は、私もウェブサイトでKVAHは見ていて、たいへん興味を持っていたため、お話を聞くことができ、本当に幸運でした。こちらのコンサートは、音楽監督をベングト・フォシュベリBengt Forsberg(日本では、メゾのオッターのピアニストとして知られています)が務めています。伺ったところによると、運営委員のほとんどは、音楽と全く関係のない仕事をしている音楽愛好家たち。フォシュベリ氏には、演奏はもちろん、演奏会内容企画、そして出演する演奏家の紹介をやってもらっているものの、実際の運営の作業自体は、演奏家には一切してもらっていない、とのことでした。基本的に月一回のコンサートで、夏のフェスティバルもあります。会場は、教会にお願いして無料で使わせてもらえるようにできたそうです。フォシュベリ氏は自身の膨大な知識からのアドバイスをされると同時に、委員たちの意見にも耳を傾け、ご自分の利益とは一切関係のない立場で芸術監督を引き受けていらっしゃり、その結果、良いコンサートシリーズができているそうです。内容を充実させるよう努力しているので、出演者たちも出演料が安くても快く演奏をしてくれる、とおっしゃっていました。(と言っても、具体的に伺ったところ、この規模の演奏会としては、出演料は日本の相場と比べると決して安くはありませんでした。)ジョイントのコンサートで若手演奏家に出演をしてもらい、たいへん良い演奏をしてくれたので、次回はリサイタルを、ともちかけることもあるそうです。残念ながら、私の滞在中は予定が合わず、こちらのコンサートシリーズを聴くことができなかったのですが、ウェブサイトなどで内容を見るかぎり、プログラム内容も充実し、出演者たちのレヴェルもかなり高いことが想像される演奏会シリーズ。規模的に、当会にとって、たいへん参考になる演奏会組織だと思います。

 他にも、フルトさんが音楽評論を書いていらっしゃる媒体についてお聞きしましたが、スウェーデンでも、新聞のクラシック音楽に関する記事のスペースは少なくなり、クラシックの音楽評論記事を載せる媒体というのは減って来ているのが現状だそうです。また、スウェーデンでは政権が替わり、国のコンサート・マネージメント機関である Rikskonserter をなくす方針になってしまったそうです。こちらの機関は、クラシックはじめ、様々なジャンルの音楽家の国内ツアー、そしてスウェーデン国内の音楽家の海外ツアーの企画をし、たいへんな成果を上げていたはずが、今後は、こうした文化活動は地方がそれぞれでやる方針となったようで、フルトさんはとても残念だ、とおっしゃっていました。(実は、ヨーテボリで聴いたブロドスキー弦楽四重奏団の演奏会も、Rikskonserter によるツアーの一環でした。)私も、特定のジャンルに偏らない、音楽文化を全体的に捉えた形でコンサート企画をし、Nybrokajen 11というホールも所有、CDレーベル Caprice とも連係した事業を国がやっている、というRikskonsert の活動にたいへん興味を持っていて、今回、こちらの活動についても詳しく知りたいと考えていたため、無くす方針と聞いて、たいへんなショックでした。

さて、こうして思いがけずたいへん有意義なお話しを聞きながらのランチが終わり、まだまだこの日は続くのですが・・・長くなりましたので、続きはまた次の記事で。

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