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カテゴリー「書籍・雑誌」の7件の記事

スウェーデン滞在記(15)

3月29日
 スウェーデン滞在、とうとう最後の日です。この日は、嬉しい大発見があり楽しく滞在を終えることができました・・・その大発見とは?

2010_3_29 さて、よく考えたら、せっかくのストックホルム滞在なのに、ほとんど街を見ていないことに気づきました。スウェーデン作曲家が、どんな気持ちで作曲したのか、音楽作品を理解するのに街の風景を見ることも大切だったはずなのに、なんとも情けない話です。というわけで、単細胞の私は、てっとりばやく(?)、旧市街・ガムラスタン を見ることに。
 朝早く、地下鉄でガムラスタンに到着。とりあえず、ふらふらと一周りしてみました。中世の面影を残しているということですので、単純に考えれば、名前が残っているスウェーデン作曲家たち、ルーマン以降の人々は、だいたい見たはずの景色なはずです。勝手に一人で即席タイムスリップをした気分で散策。この辺りは、こんな細い道が沢山あります。(玄関のワンちゃんに注目!)とはいえ、15分程度の散歩でスウェーデンの街の雰囲気を体感したつもりになるのは、おこがましいにもほどがあるというもの。スウェーデン音楽の理解の為にも、観光はスウェーデンでしかできない重要な作業だったはずが、うまくスケジュールを組めずに大反省です。次回は、もう少し、スウェーデンの空気を感じられるようにしたいと思います。

 街中に出て、スウェーデンの本屋さんのチェーン店 Akademiebokhandeln で、だいたい目星をつけてあった、瑞伊辞書と瑞瑞辞書を購入。スウェーデン語の辞書は、英語や仏語のように、選択肢が沢山ないのが悩みの種です。せっかく購入した多くの音楽書。いくつかの辞書を読み比べて、少しでもスウェーデン文の内容の真意に近づければ、と思います。既に購入してあった楽譜と、分厚い辞書や音楽書を、郵便局で日本の自宅に郵送。

 とりあえず、ここまで午前中にやり、午後は国立音楽図書館の最後の訪問へ。今回は、ステーンハンマルの声楽曲の自筆譜の閲覧をお願いしてありました。前回の閲覧が、想像以上に面白く、いただいた所蔵リストから、再度、メールで閲覧希望を出しておきました。この日に見せていただいたのは;
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船は行く Det far ett skepp
娘は年老いた母に言った Dotter sade till sin gamla moder
スヴェーリエ (「ひとつの民族」より)Ett folk "Sverige"
幸福の国への旅 Lycklandsresan
ランプのアラジン王子 Prins Aladin af Lampan
薔薇に Till en ros
さすらい人 Vandraren
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出版された楽譜を持参して行かなかったのが残念でしたが、自分がピアノパートを演奏したことがある作品をピックアップしてリクエストしました。
 自分が演奏した時の記憶をたどり、出版譜と違いそうな箇所をメモしていきました。シンプルな伴奏形から効果的な音配置に変わっていく様が分り、興味深い作業です。初稿から書き変えられた箇所は、むしろ、作曲者ステーンハンマルにとって、「そうでないといけなかった」箇所、とも言えるかもしれません。

 スウェーデンの第二国歌と言われる「スヴェーリエ」の合唱譜。こちらは清書された決定稿のようでした。たいへん緻密に書かれた楽譜は、作曲者の性格も窺えますが・・・実は、大発見はその次にあったのです!

 スヴェーリエの楽譜を裏返すと、ペンの走り書きのような楽譜が。「何かしら?」と見てみると、なんと!ピアノ協奏曲第2番の冒頭の草稿でした。一気に書いた気配で、その横に、大きな字で「Ja! (英語のYes)」と書かれています。何か、閃いたのでしょうか?その内容は、この作品が生まれる元・核ともなる可能性があるようにも見えるもの。自筆譜はコピーも禁止されていますし、悩んだ挙げ句、持っていたルーズリーフに、自分で五線を書いて写譜することにしました。
 こちらの内容・・・本当に私にとっては宝のような内容でしたが、それについては、また、改めて詳しく書かせていただこうと思います。

 次回、図書館を訪れる時は五線紙を持って行けばよい、ということがよく分りました。

 ところで、この日の国立音楽図書館での出来事です。ステーンハンマルの自筆譜の資料をカウンターで受け取って、ふと隣を見ると・・・なんと!2日前にコンサート会場で紹介された音楽学者のエヴァ・オーシュトレム先生がいらっしゃる!二人で顔を見合わせて、びっくり。エヴァ先生は、前日のハンスさん宅でもお知り合い、ということで話題になった方です。
 エヴァ先生は、現在、「スウェーデン歌曲の父」と言われているリンドブラード Lindblad の伝記を書かれているとのこと。この日も、リンドブラードの楽譜を借りにいらしていたのでした。
 エヴァ先生は、ご自身の学生たちも、なかなか自分の国であるスウェーデンの音楽に興味を持ってくれないのに、私がその分野に興味を持ったことをたいへん嬉しい、と言って下さいました。前日に、私がピアノ練習の為にハンスさん宅に行ったことを知っているエヴァ先生。「ピアノの練習場所に苦労するのは良く分るので、次回来る時は、私も力になれると思うから連絡して下さい。」と、たいへんご親切なお言葉も頂戴しました。今回は、あまりゆっくりお話しできる機会がなく、残念でしたが、いつか、エヴァ先生とも、ゆっくりお話しさせていただける機会があれば、と思います。

 さて、図書館を出る前に・・・カウンター前に並べてある本や楽譜が気になり「これ、ひょっとして購入できるのですか?」と尋ねると、どうやら古い蔵書を処分する為に一冊数百円で売っていることが分りました。実は、奥にもそのような楽譜の山があることも教えていただき、閉館間際で大慌て。ペッテション=ベリエルなどの歌曲の楽譜と、ベールヴァルド Berwald の伝記、1954年出版のMusikliv i Sverige(スウェーデンの音楽ライフ)という本を手に入れることができました。

 こうして2週間ほどにわたるスウェーデン滞在を終えました。暖かい人間関係のお陰で、思いがけず、本当に多くの貴重な体験をさせていただくことができ、色々な意味で、スウェーデンの魅力を新たに感じる旅となりました。
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 通年のコンサートシリーズの開催をお休みさせていただいている当会ですが、無理ない形での活動を模索しております。今回の主宰者のスウェーデン滞在でできた貴重な人との繋がりも大切に、現在、来年の活動計画も考えているところです。決定次第、またご報告させていただきますので、今後とも、応援よろしくお願い申し上げます!

スウェーデン滞在記(13)-3

3月27日(その3)
 ランチが終わり、元国立音楽図書館員のビルさんと一緒に、コンサートハウスの弦楽四重奏の演奏会へ。コンサートハウス Konserthuset には、前日に行ったオーケストラの為の大ホールの他に、室内楽の演奏会用の中ホールグリューネヴァルド・ホールGrünewaldsalen、そして小ホール アウリン・ホール Aulinsalen があります。今回は、中ホール グリューネヴァルド・ホールでのコンサート。2階席もあり、460人入るホールです。Isaac Grünewaldによる絵が壁や天井に描かれている暖かい雰囲気のホール。
 この日のコンサートは、その名も「ステーンハンマル弦楽四重奏団 Stenhammar Quartet」によるもので、曲目は;
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E. アンドレー:弦楽四重奏曲 ニ短調
Elfrida Andrée: Stråkkvartett d-moll
D. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第9番
D. Sjostakovitj: Stråkkvartett nr 9

L. v. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 作品127
L. V. Beethoven: Stråkkvartett Ess-dur op.127
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今回は、カルテットの名前になっている方(=ステーンハンマル)の作品が入っていないのは残念でしたが、スウェーデンの女流作曲家 アンドレーの作品が演奏されました。この弦楽四重奏団は、1995年に結成され、スウェーデン作曲家の作品をレパートリーの中心にしているそうですので、是非、ステーンハンマル始め、様々なスウェーデン作曲家の弦楽四重奏曲の演奏を他にも聴かせていただける機会があれば、と思います。ビルさんによると、スウェーデンには、以前には常設の弦楽四重奏団が沢山あったのに、今は減って来てしまっているそうです。とても残念なことなので、このステーンハンマル四重奏団には、是非、末永く活動して欲しい、とおっしゃっていました。

 休憩時間、たまたま出会った音楽学専門のエヴァ・オーシュトレムEva Öhrströmさんを、ビルさんが紹介して下さいました。彼女は、ストックホルム王立音楽院でも教えていらっしゃり、今回、演奏会で演奏された E. アンドレーの伝記も書かれています。私はスウェーデン音楽を日本で紹介する活動をしていて、スウェーデン音楽について調べている、という話ををしました。すると、エヴァ先生は、スウェーデン音楽に関する書籍は、多くがスウェーデン語で書かれていて、英語訳されているものは殆どない現状だけれど、国外にこのジャンルの音楽を知ってもらう為には、良いことではない、というお話をされていました。
 私の場合、英語も苦手なので、問題はもっと深刻です。欧米語なら、伊語が一番得意なのですが、伊語の北欧音楽の本となると、皆無に近いです。いずれにしても、もしも、スウェーデン語を母国語としている人が書いた本を読むのであれば、翻訳本でなく、スウェーデン語で読めるのが一番。翻訳されたもの、というのは、翻訳の時点で、翻訳者の“解釈”が介入することになります。(普段の会話の中でも「また聞き」というのは少しずつ現実との乖離が生まれるというのは常です。)できるだけ真実に近づく為には、介在するものを極力取り払いたい、という気持ちになるわけなのですが・・・やはり、スウェーデンの音楽を理解するには、スウェーデンの方々がしゃべっている言葉のニュアンスを少しでも沢山感じ取れるように努力することも大切だと、今回の滞在で、また強く思いました。

(話はそれますが、語弊があるといけないので付け加えます。私も翻訳本を全面否定するつもりはありません。例えば、ある物語を誰かが演出して劇にしたり、オペラにしたり、そういった「解釈」が重なることで、物語の本質の理解が更に深まること、というのも、もちろんありえます。ですので、優れた解釈表現=翻訳ももちろん存在するわけです。そういった「解釈表現」のひとつに、音楽もあるわけで・・話がそれ過ぎましたので、とりあえずこの辺りで。)

 さて、マチネのコンサートが終わり、夕方には、王立オペラ劇場で、「フィガロの結婚」を鑑賞。12年前、11年前に来た時には、古典的な演出のオペラばかりだった記憶がありますが、今年がプレミエの新演出の「フィガロの結婚」は、現代のホテルが舞台。久々の北欧歌手中心のアンサンプル感あるオペラを楽しみました。
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「フィガロの結婚 Figaros bröllop」
音楽:W.A. Mozart
指揮:Stefan Klingele
演出:Oke Anders Tandberg

Greve Almaviva: Ola Eliasson
Grevinnan Almaviva: Maria Fontosh
Susanna: Elin Rombo
Figaro: Johan Edholm
Cherbino: Katija Dragojevic
Marcellina: Marianne Eklöf
Doktor Bartolo: Lennart Forsén
Basilio/Don Cruzio: Ulrik Qvale
Barbarina: Vivianne Holmberg
Antonio: Anton Ljungqvist

スウェーデン滞在記(8)-2

3月22日(その2)
小雨の中、ヨーテボリの街を散策。ヨータ・エルヴ川 Göta älv に面したヨーテボリのオペラハウス Göteborgs Operan へ。私の滞在中、オペラハウスでの公演はなく残念でした。オペラハウスのテラスは見晴らしも良く、船を眺めることができます。公演が終った後の夜の景色は、どんななのでしょう?アンの話では、ヨーテボリにあるオーケストラは3つあり、ヨーテボリ交響楽団と、オペラ座のオーケストラと、そしてもう一つ、吹奏楽団だそうです。その吹奏楽団のコンサートが開かれるのはヨーテボリに残る最古の建物と言われるクローンヒューセット Kronhuset。1643年に兵器庫として建てられたそうですが、現在は、コンサート会場の他、工芸品の工房が並んでいます。この日はコンサートはなかったのですが、工房を覗いて来ました。チョコレートの工房で、復活祭用の卵やあひるをかたどったお菓子をおみやげに購入。
 その後、アンティークのお店などが並ぶハーガHaga地区へ。前日にアンに教えてもらった古本屋さんを覗いてみました。入るなり、探していた本を即発見!「スウェーデンの音楽 Musiken i Sverige(L. Jonsson m.fl. )」という全4巻からなる本なのですが、ちょうどステーンハンマルたちの時代について書かれた第3巻は入手困難な状況。先日お会いした里子さんもお探し中でしたが、版元にはもうないことは確実のようでした。(里子さんのお話しですと、スウェーデンでは、本屋さんが毎年セールをして、在庫を溜めないようにしてしまう為、こういうことが良くあるそうです。)ところがその本、そのお店では全4巻セットでないと売らない事が判明。いずれ、全巻揃えようと思ってはいたのですが、問題は2巻は既に日本の自宅に所有していたこと。一冊が辞書みたいに重い本を、余分に日本に持ち帰るのは、少し躊躇します。元気の良い店員さん「良い事考えた!2巻は、スウェーデンのお友達にプレゼントすればいいのよ!」というわけで、現在、2巻のみがミカエル宅に行く運命となりました。
 他にも、全2巻からなる「スウェーデンの音楽 Svensk Musik(A. Aulin & C. Herbert)」という本を発見。こちらも購入。また、別の古本屋さんでは、「政治の中の音楽 Musiken i politiken(S. Bohman)」という面白そうな本も見つけました。スウェーデン音楽限定の内容ではありませんが、ステーンハンマル、ペッテション=ベリエル、ブロムダールについての章もあり、この様な本はスウェーデン語でないとなかなかありません。

 こうして、辞書のような分厚い本を計7冊も抱えて、ミカエルの所属する合唱コンサートへ。会場は、ヴァーサ教会 Vasakyrkan という、立派な教会。ここには、良いオルガンもあるそうで、先日の記事で紹介した、里子さんのプロデュースされたCD (Mahler Songs)も、こちらで録音されました。合唱団の名前は、Svenska Kammarkören(スウェーデン室内合唱団)。メンバーの中には、音楽の先生などもいますが、全く音楽とは関係ない仕事をしている人たちも沢山いる、アマチュアとして活動している合唱団です。ミカエル曰く、おそらくヨーテボリでは一番上手なアマチュア合唱団だ、ということで、コンサートを楽しみにしていました。
 スウェーデンは、合唱の国。日本でも有名な スウェーデン放送合唱団 のように完全にプロフェッショナルとして活動している合唱団は、数少ないそうですが、アマチュアの合唱団は全国に沢山あるそうです。
 この日のプログラムは;
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"愛の小道 Kärlekens väg"
Simon Phipps(dir)
Claes Gunnarsson(cello)

P. I. Tjajkovskij(1840-1893): The Crown of Roses
Sven-Erik Bäck(1919-1994): Se vi gå upp till Jerusalem
Orlando Gibbons(1583-1625): Hosanna to the Son of David
Gregorio Allegri(1582-1652): Miserere
John Tavener(1944- ): Chant 1
F. Poulenc(1899-1963): ur "Quatre Motets pour un temps de pénitence"
Vinea mea electa
Knut Nystedt(1915- ): O Crux
J. S. Bach(1685-1750): ur Suite no.5 Sarabande
Orlando Gibbons: Drop, drop, slow tears
K. Penderecki(1933- ): Stabat Mater
John Tavener: Chant 2
F. Poulenc: ur "Quatre Motets pour un temps de pénitence"
Tenebrᴂ factᴂ sunt
John Tavener: Svyati

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バロック以前の音楽と、近現代の音楽が交互に並ぶ、絶妙のプログラミング。途中、John Tavener の Chant 1, 2, そしてバッハの無伴奏組曲のサラバンドの3曲が、お客さんの後ろからチェロのソロで聴こえてくる、という趣向。合唱団も、最初はお客さんを挟んで左右に分かれ、途中で今度は前後に分かれ、向かい合わせで合唱。途中で全員、私たちの前に並びましたが、それでも曲によって毎回、少しずつ人の配置を変えます。音楽作品に合わせて、360°様々な角度からハーモニーを聴かせていただき、柔らかく、スウェーデン独特の透明感を持った歌声に全身が包み込まれるような体験でした。最後のJ. Tavener のSvyati は、チェロと合唱の為の作品。途中でそれまで後ろから聴こえていたチェロが、今度は合唱の方々の中に入って一緒に演奏。チェロの音と合唱の声が会話する、たいへん魅力的な作品でした。

 もともと、私がスウェーデン音楽に興味を持ち始めたのは、スウェーデンの声楽作品からでした。スウェーデンの人々の歌声に包まれ、そんな初心を思い出し、自分のスウェーデン音楽の音への追求作業の中で、必死のあまり忘れそうになっていたことを思い出させてもらった・・・そんな夜でした。

スウェーデン滞在記(4)補足

 前回の記事で書いたステーンハンマルの楽譜についてです。
 当会でもお世話になっている斉諧生さんより、下記の2つのステーンハンマル作品の楽譜が出版されたとの貴重な情報をいただきました。
●Allegro Brillante for Piano Wuartet (1891)
 Allegro Non Tanto for Piano Trio (1895)
●Piano Sonata G minor(1890)
※いずれもMusikaliska Konstföreningen(音楽芸術協会と訳せば良いでしょうか) 出版

 こちらは、それまで出版されていなかったステーンハンマルの音楽作品を、自筆譜をもとに2008年に出版されたものです。ピアノ・ソナタ ト短調については、それまでも後の人の手により手書きコピーされたものがスウェーデン音楽情報センター The Swedish Music Information Centre より購入できたのですが、こちらは、明らかな書き間違いも多く、楽章毎の速度表示すら書き落とされている、というものでした。
Musikaliska Konstföreningenから出版された楽譜は、ピアニストのMartin Sturfältの校定によるもの。基本的にステーンハンマルの自筆譜を出典とし、自筆譜でのミスと思われる箇所を、校定者の手で修正してあるものの、修正を施した箇所は細かく注釈として明記されています。また、タイトルの書き方に至るまで、ステーンハンマルがどう書いたかをできるだけ忠実に伝える努力もされています。ですので、こちらの楽譜は「原典版」と考えて差し支えない内容になっているといえます。また、この楽譜の解説がすべて英語で書かれていることは、作品のインターナショナルな場への普及を期待させます。

 実は、スウェーデン音楽情報センターのピアノ・ソナタの楽譜に楽章毎の速度表示が欠けているのを見て、速度表示はレコード制作などの際に誰か後の人の手で書き加えられたのではないか?とそれまで私も疑問だったのですが、こちらの新しい楽譜のお陰で、楽章毎の速度表示はステーンハンマルの自筆譜には既に明記されていることが分りました。

 今後、ステーンハンマルや、その時代のスウェーデン作曲家の音楽作品も、こういった内容の楽譜が多く出て来てくれることを願っています。でも、ステーンハンマルの音楽作品の中には、自筆譜が残っていない(見つかっていない)ものも沢山あります。現在ある情報を可能な限り良い状態で保存していただき、そしてどこかに眠っているかもしれない情報を引き出す為にも・・・・微力であっても、私たちが、良い演奏をして彼らの音楽の魅力を少しでも多くの方に伝えていくことが大切なのかもしれません。

スウェーデン滞在記(4)

3月18日
 午前中はLilla akademien で練習。午後は、国立音楽図書館 Statens Musikbibliotekでステーンハンマルの自筆譜を見せてもらいました。
 ステーンハンマル友の会 の演奏会準備の為に度々、コピー譜などの取り寄せをお願いしていた図書館。メールだけのやりとりをしていたスタッフと初対面でお互い大喜び。これからは、相手の顔を思い浮かべながらメールのやりとりができます。
 さて、いよいよ感動のステーンハンマルの自筆譜との対面です。どのように見せていただけるのだろう・・と思っていたら、渡されたのは、厚紙のファイルに直接そのまま入った譜面そのもの!「こんな簡単な保存方法で良いのだろうか?」と思いつつ、おそ〜るおそる、紙が破れないようにファイルから取り出しました。
 今回、見せていただいたものは
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●「晩夏の夜 Sensommarnätter 作品33」より、第1曲と第2曲の鉛筆スケッチ
●「Allegretto grazios」 と 「Poco vivace, dolce e con molto grazia」(「晩夏の夜 Sensommarnätter 作品33」に入れる可能性があった2曲。実際は、この2曲は抜かされた全5曲で出版された) のペン書きの自筆譜
●「ピアノ協奏曲 第2番 作品23」の鉛筆スケッチ
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「晩夏の夜」と「ピアノ協奏曲」の鉛筆スケッチは、曲のほんの一部でした。(ピアノ協奏曲は第4楽章の冒頭スコア)しかし、実際に出版されたものは、そこから、さらに音が加えられていたり、または、逆に簡素化されていたり。彼がどういうイメージで曲を作りはじめ、最終的にどういう響きの方向を探っていったのかを想像できる、たいへん貴重な体験でした。
「Allegretto grazios」 と 「Poco vivace, dolce e con molto grazia」は、ちゃんとペンで清書されていて(たいへん見やすい、とても綺麗な楽譜でした)、出版されなかったものの、曲を書き上げた時点では、ステーンハンマルが作品を「完成させよう」としたことが伺われます。

 ステーンハンマルなど、スウェーデンのこの時代の作曲家の楽譜を見ていてよく思うことに、楽譜の指遣いやスラー等は、作曲家自身のものなのか、そうでないのか、ということです。ベートーヴェンやショパン、といった所謂「有名」な作曲家の作品というのは、「原典版」と言われる作曲家の意図に忠実な楽譜と、「学習版」ともいえる、校定者が校定を施した楽譜との区別がはっきりしています。もちろん、存命でない作曲家の作品の場合、何が本当に作曲家の意志か、というのは100%の保証はありませんが、様々な研究を重ねて、日々新しい発見も出て来ています。ものよっては、複数の「原典版」楽譜のエディション比較もでき、出版された複数の情報から、演奏者が真意を推測&選択することも可能です。その点、ステーンハンマルたちの楽譜は、その辺りが明確に表示されておらず、数少ない楽譜情報を「鵜呑み」にせざるをえません。
 今回、ステーンハンマルの自筆譜を見せていただいたのも、ひょっとすると、それを見ると、その辺りのことが解決できるのではないか、と思われたからです。しかし、残念なことに、「晩夏の夜」「ピアノ協奏曲」は部分的なスケッチの段階のもの。「Allegretto grazios」 と 「Poco vivace, dolce e con molto grazia」は、出版譜がないため、出版譜との比較はできません。

 今回、自筆譜を見せていただくにあたり、事前に日本からメールでやりとりをさせていただいた、貴重コレクション担当のライブラリアン Kia Hedell さんが、わざわざ挨拶に来て下さいました。彼女は、音楽学を専門とされている方なので、上記のことについて、なにかご意見があるか質問してみました。Hedellさんによると、スウェーデンは小さな国 -という表現をされていました- なので、確実なことが分るほど、情報が残っていないのが現状である、とのことでした。ただ、彼女は楽譜出版社でお仕事されていたこともあるそうで、その時の印象だと、ステーンハンマルの時代、北欧の作曲家は出版社との繋がりが非常に濃かったので、彼らが存命中に初版された楽譜は、作曲家自身の意図が現れていると思って良いのではないか、とお話し下さいました。ステーンハンマルの場合は、自身がピアニストであったことから考えても、指遣いは本人の指示であったと思われますが、これは、あくまで、彼女自身の個人的印象で、100%保証できるものではない、と念を押されました。ですので、できるだけ作曲家の意図を汲みたいと思ったら、作曲家が生きていた時代に、北欧、またはものによってはドイツの出版社から出版された初版の楽譜を見てみるしかないのが現状、とのことでした。

 他にも、ステーンハンマル のことを調べるなら、全3巻からなる Bo Wallner の「ステーンハンマルと彼の時代 Stenhammar och hans tid」が一番良いけれど、こちらの本はおそらく絶版になっているので、見つけるとしたら、古本屋さんでないと不可能だろう、というお話も伺いました。突然の日本からのメールにもたいへん暖かく応じて下さり、こちらの質問にもご丁寧にお答え下さった Kia Hedellさんには、本当に感謝致します。これからも、当会では、こちらの図書館の方々にはご協力をお願いすることになると思うのですが、実際にお会いしてお話できたのは、たいへん嬉しかったです。

「音楽の友」「ショパン」

月刊「音楽の友」、月刊「ショパン」の7月号に、当会主宰の和田記代のインタビュー記事が掲載されました。また、同じ月刊「ショパン」7月号には、当会のピアニスト・江尻南美のフランクフルトでの様子も掲載されています。

エクセレントスウェーデン・ケアリング

 スウェーデン大使館が年一回発行している エクセレントスウェーデン・ケアリング Vol.11 の「スウェーデン音楽の魅力(文・戸羽 晟氏)」の記事の中で、当会主宰・和田記代 の小さなインタビュー記事が掲載されました。記事の内容は、ステーンハンマルが中心となっております。
 なお、同じ号には、スウェーデンの伝統音楽奏者 レイフ・アルプショー氏、ジャズのボーヒュスレン・ビッグバンドの特集も組まれ、偶然にもスウェーデンの様々な音楽の記事が集まっています。綺麗な写真が満載のこちらの雑誌、ご興味がある方は、是非ご覧下さい。(ステーンハンマル様のお顔も、もちろん拝めます!)

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